主人公嫌いのわたしが虎杖悠仁を嫌いにならない理由は何か

少年漫画の主人公のことが、私は初見では大概好きになれない。鬼滅の炭治郎、ハイキューの日向、Dr.stoneの千空、名探偵コナンのコナンくん、ドラゴンボールの悟空、etc.

無論、話を読み進めていけばかならず段々と主人公を応援したくなるものであり、今でもなお心の底から嫌いなキャラは居ないが、とにかく最初は「なんかムカつく」のである。


これらの主人公に通ずる部分として、「底抜けの善人」「明るくみんなに好かれる」「努力家で優しい」などがある。

虎杖悠仁も漏れなくこれらの項目に当て嵌まるにも関わらず、別にムカつかないのである。

虎杖はジャンプ公式での人気投票で、イケメンキャラの五条や伏黒を抑えて堂々1位に輝いているため、「虎杖は主人公だけどムカつかない」というのは、私の個人的な好みというだけではなさそうである。


では、なぜ虎杖にはイラつかないのか。以下考察する。


 圧倒的に報われない

大抵の主人公は努力が身を結び、どんどん強くなって敵を倒していくものだが、虎杖は今のところ戦績が悪すぎる。

最大の敵・宿儺は自分の中でピンピンしてるし、花御、漏瑚、陀艮を倒したのは虎杖以外のキャラであり、脹相には敗北して半殺しにされ、やっとのことで真人を祓えるかと思われたが真人は祓われることなく偽夏油に取り込まれている。

七海、釘崎、吉野順平など、既に仲間を何人も真人に殺されたうえでこの結果である。あべこべおじさんやバッタなどは倒しているが、戦績と比して喪ったものが多すぎる。

ジャンプ漫画の主人公が頑張った分だけすくすく成長していくことにリアリティのなさを感じていた私にとって、虎杖を待ち受ける地獄すぎる展開は、むしろ彼の好感度を上げる要素となっているのである。


②倫理観がズレている

これは芥見先生のイチオシポイントであるが、虎杖は15歳のくせに平気でパチンコに行く。スプラッタ映画を平気で観て「クソつまんねぇ」と言い、祖父に自分の両親の話を聞かされそうになっても「興味ねえ」の一点張り。底抜けの善人と言い切るにはツッコミどころが多すぎる。他のジャンプ漫画の主人公にはエロ本を読まず、もし見せられたりしたら顔を真っ赤にしそうなキャラが多いが、虎杖は今どきの子なので平気でネットでAVを検索する。一応今のところ飲酒シーンはないが、「釘崎は俺が"あの状況で"酒を飲みかねないと思ってんの」というセリフがあり、未成年飲酒そのものを駄目だと思っている様子は無い。「善人ではない」とまでは言えないが、法律的なところで言えば少し議論の余地がありそうだ。


③ヒロインとくっつきそうにない

別に私はガチ恋勢ではないが、バトル漫画に差し込まれる恋愛要素は極力不要だと思っている。モブならいざ知らず、メインの女性が主人公のお嫁さん枠で消費されるのは我慢ならない。呪術廻戦における恋愛要素は与×三輪しかなく、しかも与は三輪とリアルで会えることなく死亡するという徹底した報われなさ。さすが単眼猫先生。釘崎は虎杖とも伏黒ともくっつかなそうだし、過去編でヒロイン枠(?)だった家入も五条と夏油に恋愛感情はゼロである。もしかしたら、そもそも呪術廻戦にヒロインなんてものはいないのかもしれない。


④他人を守れるほど強くない

少年漫画の主人公は大抵ヒーローなので、基本的にいつも誰かを助ける。だが虎杖の場合、目の前で順平、七海、釘崎をやられ、伏黒のピンチを救ったのは虎杖ではなく宿儺である。一般人のことは救えたのかというとそうでもなくて、少年院の少年も死んでるし、吉野凪も殺され、渋谷事変で1番大量殺戮を行なったのは宿儺(虎杖の身体)である。渋谷事変では完全に自分のことで手一杯。今んとこ虎杖がヒーローらしかった瞬間なんて初期に指を飲んで伏黒を助けたところと、真人の領域展開に侵入して七海を救った場面、交流会での活躍くらいである。「強いくせに結局のところ本当に大切な場面で大切な人を救えていない」という点では、五条と類似する。切なすぎる。鬼滅でいえば猗窩座みたいな。


もちろん、心を折られ続けた虎杖悠仁は、これからもっと強くなって、沢山の人を救うようになるのだと思う。ここまで地獄の展開に打ちのめされる様子を見た後では、素直に応援できるというものである。